狩猟採集新時代

大手上場企業を不動産投資で脱サラした30代が綴るライフログ

A型国家の日本は、B型国家のオランダの農業に学べ

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私は、オランダという国が好きです。

 

売春が合法だったり、

日本ではバシバシ逮捕されるような、

違法薬物の使用も一部合法だったりと、

いろいろ自由な国という印象があります。

 

 

私がオランダで一番好きだなぁと思う点は、

個人主義合理主義

な点です。

 

・人が何か変な事をやってても、その人の問題。

 自分に迷惑かけなければ、気にしない。

・無駄なことはしない、

 効率が良いことが、各人の幸せにつながる。

 

こんな感じです。なんだか、

日本人の最近のコロナ自粛騒ぎからすると、

真逆であるような印象を受けます。

 

 

ある本に書いてあったのですが、

日本は典型的なA型国家

オランダは典型的なB型国家

とのことです。

 

これはとても上手い表現だなと思いました。

日本人でB型の私はどうすればよいのでしょうか・・・

 

教育のレベルも、世界的に高いのが特徴です。

※参考:オランダの大学で学んだ体験に関する記事↓

子供を学ばせる環境として、オランダはいかがですか? - 狩猟採集新時代

 


この記事では、そんな自由な国オランダの、

世界トップクラスの農業ビジネスについて、

私が実際に現地の大学で学んだ内容も含め、

ちょっと纏めてみようと思います。

 

 


目次:

 

 

1.面積は小さくても、世界第2位の農業輸出国

オランダがヨーロッパにあることは、

大体の人は知っているでしょう。

 

ですが、イギリスやフランスなどの主要国とは違い、

その位置を正確に言える人は少ないかもしれません。

 

それもそのはず、オランダは、

ヨーロッパ諸国の中では決して大きくなく、

面積は、日本の約9分の1

人口は約7分の1です。


それなのに、あの世界の強国であるアメリカに次ぎ、

世界第2位の農業輸出国です。

(2018年、輸出額ベース)

 

 

小さい面積と人口で、驚異的な事実ですよね。

これは、栽培技術を徹底して向上したことによる、

収量増加品質改善によってもたらされました。


ただ輸出額としては多いものの、

国全体で見た自給率に関しては

品目ごとにバラつきがあり、

トマトなどの特定品目は輸出メインなんですが、

穀物類は輸入に頼っていたりします。

 

しかし、農業輸出額が大きいことに変わりはなく、

そういった意味では日本と比べると

危機感がだいぶ違うと思います。


※農業に関する他の関連記事↓

思ったよりもずっとずっとヤバい今の日本の農業の事実 - 狩猟採集新時代

 

 

オランダの農業高効率化への取り組みは、

ECが発足して農作物の輸入が自由化した

1980年代にさかのぼります。

自由化で入ってくる海外の安い農産物に負けないよう、

自国の農業を強めようとしたのがきっかけの様です。

 

初めの頃は、収量だけひたすら増えただけで

品質があまり良くなかったようですが、

今ではヨーロッパ全土へ向けて

ガンガン輸出できるレベルになりました。

 

では、この高い栽培の技術は、

どのように生まれたのでしょうか?

 

 

 


2.研究内容と、その使い方がエゲつない

私は、オランダの南のほうにある

ヴァーヘニンゲン大学の「サマースクール」という

2週間の研修に参加しました。

 

この大学、名前自体はマイナーかもしれませんが、

農業分野では世界トップと言えるレベルの高さ。

これら大学の研究成果が、

オランダの凄まじい農業輸出額を支えています。

 

 

私は、農業ビジネスに深い興味があり、

サラリーマン時代から色々調べていました。

 

そして、このオランダの現状と

ヴァーヘニンゲン大学の短期講習の存在を知って、

どうせ脱サラして農業を学ぶなら、

世界一に行ってみよう!と決意し、

フィリピン留学したりして英語を付け焼刃で学び、

いざ、オランダでの学びがスタートしました。

 

※退職事由に関する参考記事↓

退職には、不労所得よりも”きっかけ”がはるかに重要な理由 - 狩猟採集新時代

 

 

オランダで学んだ研究内容の一部を、

ご紹介しましょう。

 

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上の写真は、バジルの栽培に関する研究です。

赤色LEDと青色LEDを組みあわせ、

発芽から成長までを最も短時間で、

なおかつ収穫量が確保できるような

光の強度・位置・波長といった条件を調べています。

 

驚くべきことに、葉の位置や量がどの株も同じで、

均質化されています。

まさに、畑というより工場ですよね。

 

 

そして、これらの技術を大規模で行うことにより、

単位面積あたりの設備コストを抑え、

より効率化させているのです。

 

エンジンの効率が、

小型のモノより大型のモノのほうが良くなるように、

設備にはスケールメリットというものがあります。

 

下の写真は、オランダの大手バラ農家さんです。

もっと工場みたいになっています。

 

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このように、栽培から出荷までが大規模に行われます。

自動化できるところは自動化して、

人の手に頼るところも、作業が明確に手順化されています。

 

 

オランダ人の徹底的な合理主義っぷりは、

様々な研究でも見て取れます。

 

少々化学的な話になりますが、

とある講義において、次のような課題がありました。

光合成により植物は成長しますが、

化学的に光子(フォトンの量が光合成量を定めます。

そこで、地球の緯度から、太陽光の光子照射量(mol)を算出

そこから光合成における、植物の乾燥重量増加量(g)を計算します。

 

厳密には乾燥重量の増加量は対数関数的に変化するので、

植物の発育日数によって変わるのですが、

そこはエクセルで漸化式的に計算可能です。

 

これにより、光の量を増加させた場合、

植物の最終的な収穫量がどの程度増えるのかがわかります。

 

 

さらに驚いたのは、

講義内の課題で収益計算まで行うこと。

 

上記の例では、ランプの設備追加投資額を仮定し、

算出した植物の収穫量増加量=収益増加量から

損益分岐点を生徒たちに計算させて、

投資の是非とROIを判定させます。

ROI:Return of Investment ⇒ 投資回収にかかる年数

 

 

もちろん、こういった収支バランスを

日本の農業経営者が考えないわけではありません。

日本の大学の農学部でも、

応用問題として出ているモノなのかもしれません。

 

しかし、農家という経営者ではなく、

大学で教鞭をふるう講師陣たちまでもが、

徹底したコスト意識を持っていることが衝撃でした。

 

 

このヴァーヘニンゲン大学のキャッチフレーズに、

"Today's knowledge, Tomorrow's business"

というものがあります。

 

今日得た知識を、明日のビジネスに活かす。

この大学の教育スタイルでは、

"技術と知識をどうカネに活かすか"、

そこまでがセットなのです。

 

おそるべし、オランダの合理主義。

 

 

 


3.農家の素朴なイメージはビジネスだけに活用

未だに日本では、”農家”と聞くと、

のどかで自然豊かな生活感が付きまといます。

 

自然の中で、一生懸命手間暇かけて育てる・・・。

そんな農家さんのイメージが、

お米・肉・野菜をより一層おいしくさせます。

 

しかし、先の写真のように、

効率化を進めた先にあるのは、

このような機械化が進んだ大規模農場です。

さらに、徹底したコスト管理によるスマートな経営

 

 

あまり知られていないかもしれませんが、

すでにこの規模の温室は、

20年くらい前から日本でも導入が始まっています。

 

私がインターンでお邪魔した茨城県の農家さんも、

オランダ的な先進設備を導入した、大規模農場でした。

これから、こうした大規模農場は増えていくでしょう。

 


一方で、未だに牧歌的な農業のイメージは健在で

定年退職後の「農的ライフ」を考える人も少なくありません。

地方移住して、農地を持つ夢を持つ人もいるでしょう。

 

実際の農業は、事業としてはかなりキツイものがあります。

普通にやるだけでは、サラリーマンの収入には程遠いのです。

農家さんも、日々シビアなお金との戦いなのです。

なので、効率化したスマートな農業が、

収支改善のためには絶対に必要になってきます。

 

 

しかし、農業をやろうと思わない一般の人たちが

このことを知る必要は一切ありません。

この「農的ライフ」の牧歌的なイメージは

残しておいて、憧れさせておくのです。

 

ちょっと乱暴な言葉を使うと、

農的ライフは客寄せパンダで良いのです。

"都会住まいの人をターゲットに観光農園

自然との触れ合いをビジネスにして、

家族連れに有機農業のすばらしさを伝える"

これは一つの有効な方法だと思います。

 

子供の健全な教育に、農的な生活が与える影響は、

人格形成などにおいても、とても重要だと言われています。

 

 

ただ、事業としての生産量に集中するなら

四の五の言っていられません。

日本は山林地帯が多いので、

全ての場所で大規模農業の展開は難しいかもしれませんが、

国や公共機関による支援を投入すれば、

ある程度の規模拡大、効率化は進められると思います。

なにより、自治体の大事な食料確保に繋がります。

 

 

あくまでも「農的ライフ」という一般イメージは保ちつつ、

生産面では合理的にバリバリ効率化を進めていく。

両方の面で、まだまだ発展の余地がありまくる業界だと思います。

 

 

日本の農家さんは、とても努力してきたと思います。

ですが、変革のときが来ています。

すでに富士通東芝といった機械メーカーも、

農業分野に参入して、実地研究を進めています。

 

まだ日本が世界に優位性のある、

ロボット・情報処理の技術を農業にも応用していくことが

重要なのは言うまでもないと思います。

 

 

ただ私は、日本の農業に関して、

オランダ式農業に倣ったほうがいいのは、

技術的な面もさることながら、

ビジネスへのガメつさ

を最も学ぶべきなのかも、と感じています。

 

 

B型国家の名のもとに、

必要なとこはやる、

要らないところは冷酷に削る、

 

この姿勢は、農業だけに限らず、

いろんな分野に必要な気もします。

 

 

 

以上